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日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉) - 和書 - ペットのセレクト通販

アイテム詳細

神門 善久

NTT出版

グループ:Book

ランキング:4027

価格:¥ 2,520

ポイント:25 pt

発売日:2006-06-24

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カスタマーレビュー

研究者のあるべき姿をみた  (2008-12-23)
1962年生まれ京大農学部卒 明治学院大経済学部教授
養老先生の本に紹介されていて、鼎談も掲載されていたので読んでみた。
出だしの方の、食と農に関係しない部分は若干思い込みもあるように思うのだが、本書の核心部分は実に説得力があると思う。ご自身が書かれているように、筆者は近年の食と農をめぐる議論に重大な懐疑を抱いていて「食と農の問題の本質は市民(農民および消費者)の怠慢と無責任である」と指摘し。今日の日本の社会はこの耳に痛い事実に向き合わず、議論をすり替えているのではないかと危惧している。そして同時の行政への強い非難も同時に行っている。
農地転用の政治的利用規則の恣意的操作(このために農民は農業より土地売買等で大きな利益を得る)、都市農村間の所得再配分システムは先進国ー途上国間でも行われるべきだと、グローバルでの食と農問題を指摘する。
大規模農家の育成、食料自給率の向上を農水省は政策目標に掲げながら、農地転用に関してはなんらメスを入れなかった。その結果、一部では農地改良―交通アクセス向上―ショッピングセンター誘致などが行われた。これらの事から日本農業の最大の生産物は農地であると筆者は授業で教えると書く。また転用以外での農地売却を農地への愛着(先祖代々の財産として)とする農民のエゴも指摘する。
分散錯圃(農地が数ケ所に分散し、 しかもそれが他の者の農地と混在していると言う日本特有の土地条件形態)も歴史的遺産にしてしまう誤謬も指摘する。だから農民はあえて貸したりする面倒を避け、転用でない農地売却を行わない。これをエゴであり甘えだと指摘する。またそこに農水省(国)の農地保有自由化に反対しつつ転用規則を骨抜きにし、実は外部の圧力に屈したふりをして農地保有を自由化し農地を買い漁らせるという悪魔のシナリオがあると。
農地利用の規則運用の公正正大に行い、個々の地権者のエゴをどのように抑えるか、また市民が行政まかせでない食の安全に関与することが重要だと指摘する。

これ以外にも農協の問題(金融部門等の)にもデータを沢山つかって切り込んでいる。
貧しい農家出身だと吐露する神門さんの日本の農業、いや世界の農業への熱い思い入れが感じられる。そしておそらく身の危険も感じて本書を敢えて書かれた事は想像に難しくない。

自己言及の難しさ  (2008-12-19)
「市民としての責任を分担するのではなく、
"手ごろな誰か" に罪を擦り付け、攻撃の標的にする」風潮への憂い・・・。
「食と農の場合、"手ごろな誰か" とは、行政であった」
「学校や教育が、やっかいな問題への逃げ道として使われることが多い」現状を
秋谷重男著『産地直結(1978)』・・・
《現代の巨大都市が、地域社会内に農林漁業を包摂するシステムを放棄したとき、
 当該商品とサービスにかかわる消費者の「無知」と、
 「無知」を背景にする欲求不満は拡大再生産されるような構造をもつにいたった。
 このような現代都市がつくりだす「無知」と欲求不満は、なにも食品だけに限ったことではない。
 上下水道やゴミ処理場についても、同様のことが言える。スケール・メリットだけを追求して、
 水源や保安林や処理場が遠隔化し、消費者の日常的な知見の範囲から遠のくにつれて、
 資源の保全・管理や処理限界についての「無知」と欲求不満は拡大し、
 役所は安価・大量・迅速にしかるべく処置せよという要求のみが噴出してくるのである》
を紹介することで、「30年前も今も、基本的構造が変わっていない」と教えて下さった。

「市民としての責任分担(あるいは市民参加)することに経済的インセンティブを与えるべきである」
と、自己言及を下支えする仕組みに言及されつつ、
既得権者に対する厳しい批判(「転用期待にメスを入れないかぎり、農地流動化はおきない」)が開陳されている。

「国際労働移動自由化においても途上国の国民に "自発的に" 途上国に留まる誘引を与えるシステムを考案する」
「研究者の著作の価値は、死後に判明する。
 本書は純粋な学術書ではないが、私の死後の読者の目を強く意識している」と仰る姿勢に、
愛すべき真っ直ぐさを感じた次第です。

耳は痛むが読破した後に何かが得られます。  (2008-12-17)
昨今の食料、農業、農村を取り巻く社会問題の各論をコンパクトにまとめている。
話題は、食の安全から農地、そして、日本農業を語る上でタブーとなっている“農協”まで、多岐にわたる。
ただし、消費者保護や行政、企業の不誠実な態度の糾弾を旨としたいわゆる“マル経”“プロ市民”的な目線とは一線を画し、矛先を“無責任な消費者”に向けている。
この議論を突き詰めていくと、今の高度消費社会が実は危うい“情報の不完全生”の中で辛うじて回っていること、ひいては戦後の高度消費社会が消費者(あるいは国民)の衆愚化をもたらしたこと、に気づかされる。
一連の記述内容や論脈を支持するしないは別として、この“消費者”に媚びない書きぶりは斬新、爽快である。

農業問題を学ぶ上で学際的な着眼点、あるい“一般的な”消費者の思考という尺度で評価すれば“傍流”なのかもしれないが、“良識ある”消費者の思考なり振る舞いという尺度で評価すれば“本流”“正論”と言える。

爽快感ある研究書  (2008-11-02)
著者の主張は強く、ブレず一貫しています。よって高度な専門書ながら、農業分野に精通しない読者にも一通り読めます。
一人称の「私」も積極的に使われ読みやすい。
他方、「JAに関する考察」「農地と政治」などさすがに専門的。
農地転用の推移や農地流動化面積のマクロ的統計など、他で見ないデータが筆者の手によって算出されています。詳細な論理、提言もクリアで具体的。
読後、爽快感があふれる研究書だと思います。

日本社会のあり方に指針を与える貴重な書  (2008-06-05)
本書を、食品偽装、遺伝子組み換え食品、BSE、日本の自給率の低下
などの問題に関する行政批判の一類であると高を括って読み始めると
カウンターパンチを食らうことになる。なぜなら著者は、近年の食と
農をめぐる議論の問題の本質は、我々市民(農民および消費者)の怠
慢と無責任にあると断言しているからである。よって、殆どの人にと
って、本書を読み進めることは、自分が如何にお任せ民主主義に甘や
かされた日本社会の市民であったかということを是認させられ、具体
的行動を強いられるという苦痛を味わうことになるだろ。

本著の中盤ではJAの怪しさ、農地と政治、企業の農業参入に関する問題
が論じられているが、既得権益を握る側がいかに具合よく延命してきて
いるかということを非難するに留まらない。このような現状を作り出し
たのには市民の行政監視の責任放棄が原因でもあり、マスコミが取り上
げ、自分にも被害が及ぶと感じるや否や、行政を批判し、善良な市民面
をするのは卑怯(無意識であっても)だとまで言い切っている。これと
よく似た例として、高層マンション建設反対運動などがあげられる。高
層マンションの建設を抑えたいのであれば、普段から条例作りを進めて
おけばよく、それを怠っておいて、隣地に合法的に高層ビル建設計画が
持ち上がると環境悪化を理由に反対を訴えるといったものだ。その反対
運動に費やすエネルギーロスを考えてば、欧米に見習って、事前に合法
的にトラブルの種を摘み取っておくための市民参加の政治的土壌の培っ
ておくことも必要であろう。このような問題からだけを見ても、常日頃
から自分に関することには責任を持つことが重要であると感じる。

個人的に面白いと思ったのは、「結章」で述べられている、日本農業へ
の外国資本・外国労働力の導入という提案だ。農業の担い手が減ってい
る現状においては妥当な策に思えるし、本当の意味での食の安全・安心
を考えるよい機会になるかもしれない。

詰る所、本書は食と農の枠組みを通じて、市民の責任放棄という日本社
会の病理を糾弾し、キャッチアップを終えた日本社会のあり方に指針を
与える貴重な書である。自分の思考の枠を広げられたという意味でも大
いに読む価値があった。

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